「生成 AI を業務に使えと言われたが、他社がどこで使って、どれだけ効果が出ているのか分からない」。社内で AI 活用を任された担当者が最初に集めるのは、事例と数字です。ところが検索上位の記事で紹介されている事例の多くは、画像認識やドローンなど生成 AI 以外の AI だったり、ツールを売る会社の自社製品の紹介だったりして、社内の説明にそのまま使いにくいのが実情です。

本記事では、企業・行政機関が公表した事例、またはその導入を担った企業が公表した事例を 8 件取り上げ、出典と、公表された数字をそのまま示します。事例の前に、総務省・IPA・中小企業基盤整備機構の調査で日本企業の現在地を確認し、事例に共通する傾向から「自社で最初に試す一業務」と「効果の測り方」を決められるように整理しました。職種ごとの具体的な使い方は 職種別 AI 活用おすすめマップ で扱っているので、あわせて参照してください。

数字はすべて、各出典に書かれている表現のまま載せています。出典が「見込み」としている数字は、本記事でも見込みとして書いています。確認日は 2026 年 10 月 5 日です。

日本企業の生成 AI 活用は、どこまで進んでいるか

個別の事例に入る前に、公的な調査で全体の位置を確かめておきます。自社が遅れているのか、どこから始める企業が多いのかが分かると、どの事例を自社の参考にすればよいかを判断しやすくなります。

調査主な数字
総務省「令和 7 年版 情報通信白書」生成 AI の活用方針を定めている企業 49.7% (2024 年度調査。2023 年度は 42.7%)。何らかの業務で生成 AI を使用中 55.2% (自社の活用方針を知っている回答者をもとにした推計)。「メールや議事録、資料作成等の補助」で使用中 47.3%
IPA「DX 動向調査」(2026 年 7 月公表)AI の用途は「文書・音声の要約・翻訳・校正」82.5%、「文書・レポートの作成」80.5%、「情報検索・収集・分析・レポーティング」77.0%
同上AI 導入の効果は「期待以上」「期待どおり」の合計 31.8%、「一定の効果はあった」50.6%。効果の内容は「業務が効率化したり迅速化した」91.6%、「売上や利益が向上した」3.9%
中小企業基盤整備機構「AI 等の利活用に係る実態調査」(2026 年 3 月)中小企業の AI 導入率 20.4%。導入済み企業で使われている AI は生成 AI が 82.6%。導入している部門は総務・管理 68.3%、営業・販売・サービス 60.3%

出典は 総務省 令和 7 年版 情報通信白書、IPA プレスリリース (2026 年 7 月 16 日)、中小企業基盤整備機構の調査結果 です。

3 つの調査から読み取れることは 3 つあります。1 つ目は、使われている用途が文書の要約・作成と情報検索に集中していることです。2 つ目は、効果の中心が業務の効率化だという点です。IPA の調査で効果の内容に「売上や利益が向上した」を挙げた企業は 3.9% にとどまりました。3 つ目は、活用方法の情報が足りていないことです。総務省の白書では、導入の懸念として「効果的な活用方法がわからない」が最も多く挙がっています。中小企業基盤整備機構の調査でも、「成功事例や活用事例などの情報」が十分でないと答えた企業が 83.3% ありました。

IPA の調査では、AI を導入している企業の割合は従業員 1,001 人以上で 8 割近くにのぼる一方、101 人以下では 16.6% でした。規模による差は大きいものの、中小企業基盤整備機構の調査では、AI を導入済みの中小企業の 82.6% が生成 AI を使っています。中小企業でも、使われている AI の中心は生成 AI です。

生成 AI の活用事例 8 選 (企業・官公庁・自治体の公式発表から)

ここで取り上げるのは、当事者の企業・官公庁・自治体、またはその導入を担った企業が公式に発表した事例だけです。報道でしか確認できなかった事例は外しています。

#組織業務型公表された数字
1パナソニック コネクト全社員向けの AI アシスタント汎用型1 年で 18.6 万時間の労働時間を削減 (国内全社員約 12,400 人に展開)
2パナソニック コネクト品質管理の社外秘文書に答える AI業務特化品質管理の文書 630 件・11,743 ページが対象、従業員評価 3.5 点
3デジタル庁職員向けの生成 AI 環境「源内」汎用型約 1,200 人中約 950 人が利用、のべ 6 万 5,000 回以上 (3 ヶ月)
4デジタル庁マニュアル検索・公用文チェック・議事録の AI業務特化行政実務用のアプリ 20 種類 (2025 年 8 月 8 日時点)
5横須賀市全庁での ChatGPT の活用実証汎用型約半数の職員が活用、回答者の約 8 割が「仕事の効率が上がる」
6東京都職員の活用事例集 (企画・要約・メールなど)汎用型34 の活用事例とプロンプトを公開
7明治安田生命コールセンターの応対メモ作成顧客対応応対メモ作成の時間を約 30% 削減できる見込み (年間約 55 万件の照会)
8ソフトバンク (ワイモバイル)サポートの回答支援と照会の自動応答顧客対応回答支援チャットを 2025 年 2 月に導入

表の「型」は、本記事で事例を読み解くための分け方です。汎用型は、汎用のチャットを広く配って文書作業を軽くする使い方を指します。業務特化は、社内のマニュアルや記録を読ませて、特定の業務の質問に答えさせる使い方です。顧客対応では、問い合わせの受け答えや後処理に AI を組み込みます。ソフトバンクの発表には、効果の数値は書かれていません。

1. パナソニック コネクト: 全社員向けの AI アシスタント

パナソニック コネクトは、自社向けの AI アシスタント「ConnectAI」を国内全社員約 12,400 人に展開しています。2024 年 6 月 25 日の発表によると、2023 年 6 月〜2024 年 5 月の 1 年で、全社員の労働時間が 18.6 万時間削減されました。社員が 1 回ごとに答えた削減時間 (平均約 20 分) をもとにした数字です。12 ヶ月のアクセス回数は 1,396,639 回です。

注目したいのは使われ方の変化です。発表では、検索エンジン代わりのような用途から、戦略策定や商品企画など 1 時間以上の生産性向上につながる利用が増えたとしています。素材や製造工程に関する質問など、製造業らしい使い方も増えたとのことです。配った直後の使い方がそのまま続くとは限らず、使い込むうちに用途の中身が変わった事例として読めます。

出典は パナソニック コネクトのニュースリリース (2024 年 6 月 25 日) です。

2. パナソニック コネクト: 品質管理の社外秘文書に答える AI

同じ発表で、自社固有の社外秘情報である品質管理の文書 630 件・11,743 ページを根拠に、質問へ回答する AI の活用を始めたことも公表されています。発表では、この AI への社員の評価 3.5 点 (5 点満点) を高い水準と評価しています。回答には引用元を表示し、社員が真偽を確かめられるようにしています。

事例 2 は、全社員向けの汎用 AI では答えられない社内固有の知識を、業務ごとに読ませて答えさせる段階です。発表の記述からは、後で触れる RAG (社内文書を検索して、その内容を根拠に回答させる仕組み) にあたる仕組みと考えられます。製造業で社内のデータや基幹システムを AI に使える状態にする進め方は、製造業の AI 活用と基幹システム刷新の進め方 で扱っています。

3. デジタル庁: 職員向けの生成 AI 環境「源内」

デジタル庁は、全職員が使える生成 AI の利用環境「源内」を内製で構築し、2025 年 8 月 29 日に利用実績を公表しました。2025 年 5〜7 月の 3 ヶ月で、職員約 1,200 人のうち約 950 人 (全職員の約 8 割) が利用し、利用回数はのべ 6 万 5,000 回以上、利用した職員 1 人あたり平均 70 回でした。職員アンケートでは、回答者 110 人のうち 87 人 (79.1%) が業務の効率化に寄与していると答えています。

一方で、利用の二極化も明らかにしています。3 ヶ月で 100 回以上使った職員が 150 人以上いたのに対し、利用が 5 回未満にとどまった職員が 170 人いました。職制別では、若手職員や民間人材が多く使う一方で、課長級職員の半数は利用実績がゼロでした。配っただけでは使う人と使わない人に分かれることを、数字で示した公開資料です。

出典は デジタル庁「デジタル庁職員による生成 AI の利用実績」(2025 年 8 月 29 日) です。

4. デジタル庁: 行政実務に特化したアプリ

源内では、汎用のチャットとは別に、行政実務に特化したアプリを職員が内製で作って提供しています。2025 年 8 月 8 日時点で 20 種類です。資料に例として挙がっているのは次のようなアプリです。

  • 旅費などの内部管理システムや電子決裁システムの、膨大なマニュアルと FAQ を踏まえて質問に答えるヘルプ AI
  • 業務内容から担当部署を示す AI
  • 作成した文書が公用文の作成ルールに合っているかを確かめる AI
  • Web 会議の録画から書き起こしを作る AI

民間企業に置き換えると、社内システムの操作マニュアル、社内規程、文書の表記ルール、会議の記録といった、どの会社にもある文書業務です。汎用のチャットと並べて「自社のマニュアルを読ませた専用の窓口」を用意する形は、事例 1・2 のパナソニック コネクトと同じです。

5. 横須賀市: 全庁での ChatGPT の活用実証

横須賀市は 2023 年 4 月 20 日から ChatGPT の全庁的な活用実証を行い、6 月 5 日に結果を公表しました。約半数の職員が実際に活用し、最終アンケートの回答者のうち約 8 割が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と答えています。

同じ発表には課題も書かれています。ChatGPT の用途に向かない「検索用途」での利用が約 3 割あり、6% 程度の職員が、返ってくる回答が概ね不適切だと答えました。市は、質問や指示の仕方、利用方法に課題があるとまとめ、本格実装に進みながら、職員のスキルを上げるプログラムやプロンプトのコンテストに取り組むとしています。使い方の課題は、事例 3 のデジタル庁の二極化ともつながっていると考えられます。

出典は 横須賀市の報道発表資料 (2023 年 6 月 5 日) です。

6. 東京都: 職員のアイデアを集めた 34 の活用事例集

東京都デジタルサービス局は、2023 年 8 月に文章生成 AI の全局利用を始め、10 月の職員アンケートを踏まえて 2024 年 1 月に「都職員のアイデアが詰まった文章生成 AI 活用事例集」を公表しました。事例集を作った背景として、「どのような業務に活用できるのかわからない」等の理由で、まだ使っていない職員が多かったことを挙げています。

事例集は 34 の活用事例とプロンプトを、次の 8 つの場面に分けて載せています。

場面掲載されている事例の例
企画・アイデア出し政策のアイデア案を出しリスクを確認する、研修のテスト問題を作る
文案作成適切なフレーズの提案、誤字脱字の修正、説明ペーパーの作成
要約文章の要約
メール作成話し言葉からビジネスメールを作る、メール文の校正
会議の開催会議の時間配分と次第を作る、会議メモから報告文を作る
広報発信プレスリリースの作成、SNS の文章の炎上リスクの確認
ローコード等の生成Excel (スプレッドシート) の関数を作る
翻訳外国人来訪者向けの想定問答、英文レターの作成

事例集の冒頭には、都のガイドラインの利用ルール 4 項目も載っています。個人情報など機密性の高い情報を入力しない、著作権や知的財産権に注意する、生成された回答の根拠や裏付けを必ず自ら確認する、回答を対外的にそのまま使う場合はその旨を明記する、の 4 つです。社内向けの利用ルールを作るときの雛形として使えます。なお、事例集のプロンプトは活用事例のイメージで、必ずしも実務で使ったものではないと注記されています。事例集は、発行元を明記すれば著作権法の範囲内で引用・転載できるとされています。

出典は 東京都の報道発表 (2024 年 1 月 30 日) と 活用事例集 (PDF) です。

7. 明治安田生命: コールセンターの応対メモ作成

明治安田生命のコミュニケーションセンターは、電話での問い合わせを年間約 55 万件受けています。通話後に照会内容を要約した応対メモを手作業で作っていましたが、生成 AI が通話のテキストから応対メモを自動で作る仕組みを導入しました。導入を支援した ELYZA の 2024 年 1 月 22 日の発表では、応対メモ作成業務の時間を約 30% 削減できる見込みとしています。明治安田生命自身の発表ではなく、支援企業の発表です。この仕組みは、過去の応対メモを学習させた日本語特化のモデルを使っています。

問い合わせへの回答そのものではなく、通話の後処理から AI を入れている点が参考になります。通話の後処理は顧客の目に直接触れないため、誤りが出ても顧客に届く前に直せると考えられます。件数が多い定型の作業なので、効果も出やすい業務です。

出典は 株式会社 ELYZA のプレスリリース (2024 年 1 月 22 日) です。

8. ソフトバンク (ワイモバイル): 回答支援チャットと照会の自動応答

ソフトバンクは、ワイモバイルのカスタマーサポートに、生成 AI と RAG を使って回答案を数秒で作り、提示する回答支援チャットを 2025 年 2 月に導入しています。2025 年 11 月 7 日の発表では、2025 年 8 月下旬に照会業務の一部 (暗証番号の照会) を音声の自動応答に切り替えたことを公表しました。

この発表の範囲では、オペレーターに回答案を示す回答支援が先にあり、顧客に直接答える音声の自動応答はその後に置かれています。

出典は ソフトバンクのプレスリリース (2025 年 11 月 7 日) です。

事例から分かる 3 つの傾向

8 件の事例を並べると、業種や規模が違っても、複数の事例に共通する点が 3 つあります。

配るだけでは、使う人と使わない人に分かれる

デジタル庁では課長級の半数が 3 ヶ月間で利用ゼロで、利用が 5 回未満だった職員が 170 人いました。横須賀市でも実際に活用したのは約半数です。東京都が事例集を作った背景も、どの業務に使えるか分からずに使っていない職員が多かったことでした。全社に環境を配ることは出発点で、その後に「この業務でこう使う」という例を部門ごとに配る工程が要ります。

向かない使い方が混ざり、不適切な回答に当たる職員がいる

横須賀市では向かない検索用途での利用が約 3 割あり、6% 程度の職員が、返ってくる回答が概ね不適切だと答えました。検索機能を持たない生成 AI は、最新の事実を調べる用途に向きません。手元の情報を要約・整理・下書きする用途が中心です。利用ルールと一緒に、向く用途と向かない用途を最初に伝えておくと、向かない使い方を減らせます。

先行する組織は、汎用のチャットに加えて社内文書を読ませる AI を用意している

パナソニック コネクトは品質管理の社外秘文書に答える AI を、デジタル庁は社内システムのマニュアルに答える AI を、汎用のチャットとは別に用意しました。ソフトバンクの回答支援チャットも RAG を使っています。汎用の AI は社内固有の規程や手順を知らないため、「社内のあの資料に何と書いてあったか」という質問には答えられません。AI に社内の文書を読ませると、その質問に根拠つきで答えられるようになります。業務特化の AI は、根拠の文書を更新し続ける運用まで含めて計画します。

要点

自社で進めるなら、最初から業務特化の仕組みを作り込むより、汎用のチャットが「どの業務で何を聞かれているか」を先に掴むほうが、作るものを絞れます。

業務別に見た生成 AI の使いどころ

公開事例と調査の結果を、部門別の使いどころとして整理し直します。「型」は事例の一覧で示した分け方で、業務特化と顧客対応は、汎用型より作り込みが要ります。

部門使いどころ型
営業・マーケティング提案書・営業メールの下書き、商談記録の要約、記事や SNS 投稿の案出し汎用型
営業・マーケティング失注理由や問い合わせ内容の分類・集計汎用型〜業務特化
総務・人事・経理就業規則や経費精算ルールを根拠に答える社内ヘルプ業務特化
総務・人事・経理契約書のひな形の下書き、求人票や社内通知の作成汎用型
企画・広報企画のアイデア出しとリスクの確認、プレスリリースの下書き汎用型
カスタマーサポート応対メモの自動作成、オペレーター向けの回答候補の提示顧客対応
カスタマーサポート定型の問い合わせへの一次回答と、人への引き継ぎ顧客対応 (AI エージェント)
製造・品質・現場品質記録や設備マニュアルを根拠に答える AI、手順書の多言語化業務特化
情報システム・開発社内システムの操作マニュアルのヘルプ、コードの下書きとレビュー業務特化

中小企業基盤整備機構の調査では、AI を導入した中小企業で、導入している部門は総務・管理部門が最も多い 68.3% でした (生成 AI に限らない AI の数字です)。規程・手順・申請など、答えの根拠になる文書がすでに社内にあることが、理由の 1 つと考えられます。職種ごとにどのツールをどう使うかは 職種別 AI 活用おすすめマップ で詳しく扱っています。

汎用チャット・業務特化 AI・AI エージェント・RPA の違い

事例の「型」によって、必要な作り込みと費用が変わります。業務効率化でよく比べられる RPA も含めて、役割を整理します。

仕組み得意なこと苦手なこと事例
汎用のチャット (法人向けプラン)要約・下書き・言い換え・翻訳など、1 回で終わる文書作業社内固有の知識、複数の手順にまたがる作業パナソニック コネクト、横須賀市、東京都
業務特化の AI (RAG)社内のマニュアル・規程・記録を検索し、それを根拠に答える根拠の文書が無い・古い業務パナソニック コネクトの品質管理、デジタル庁のヘルプ AI
AI エージェント目標を与えると、判断と道具の利用を組み合わせて複数の手順を進める人の確認なしの完全な無人運用定型の問い合わせの一次対応など
RPA決まった画面操作やデータの転記を、決まった手順どおりに繰り返す判断が入る作業、入力の形式が変わる作業—

RPA は、入力の形式が安定していて判断が入らない作業には今も有効です。生成 AI と排他的に選ぶものではなく、判断と文章は生成 AI、API の無い古いシステムへの入力は RPA と分担させると、既存システムを大きく改修せずに自動化できる範囲が広がります。

業務特化の AI と AI エージェントは、社内データとの連携や評価の仕組みまで作るため、開発の案件になります。進め方は PoC の進め方と判定基準 で、本番に進むかを決める物差しまで含めて解説しています。

最初の一業務の選び方と効果の測り方

事例を読んだ後に決めることは、自社で最初に試す一業務です。公開事例の数字はその会社の業務と測り方に基づくもので、自社の効果は自社で測って確かめます。

FIXITFIXIT

18.6 万時間って、うちでも同じくらい労働時間が減るってこと?

ShioriShiori

同じにはなりません。減る時間は業務の中身と人数で変わるので、自社の数字は自社で測るしかありません。

FIXITFIXIT

じゃあ、何を測ればいいの?

ShioriShiori

整理すると、試す一業務の処理時間と件数です。導入前に測っておけば、導入後の数字と比べられます。

一業務を選ぶ 3 つの条件

最初の一業務は、次の 3 つがそろうものから選びます。

  1. 頻度が高い。月に数件しか発生しない業務は、効果が積み上がらず、検証の結果も出ません
  2. 判断の基準を言葉にできる。規程・マニュアル・過去の対応記録など、答えの根拠になる文書がある業務は、生成 AI の出力が安定します
  3. 誤りを人が拾える。出力を人が確認してから使う業務なら、AI が誤っても損害になる前に直せます

この 3 つがそろう代表が、議事録や応対メモの作成、社内規程の問い合わせへの回答、定型の申請の一次受付です。明治安田生命の応対メモ作成も、デジタル庁の社内システムのヘルプ AI も、この 3 条件に当てはまる業務です。逆に、判断の基準が担当者の頭の中にしかない業務や、誤りがそのまま顧客や法令に影響する業務は、最初の対象にしません。業務の洗い出しから始めたい場合は、業務効率化は何から始めるか の棚卸しの手順が使えます。

測る指標

選んだ業務について、導入前に次の数字を取っておきます。

指標測り方
処理時間1 件あたりの作業時間を、数日分の実測で平均する
件数1 ヶ月に処理している件数
利用率対象の担当者のうち、週に 1 回以上使っている人の割合
手戻りAI の出力を人が直した件数と、直した理由

デジタル庁が利用回数の分布を職制別に出したように、利用率は平均だけでなく分布で見ます。使っていない人がどの職制や部門に偏っているかを見れば、次に誰へ使い方の例を配るかが決まります。効果を経営に報告する形まで設計したい場合は、AI 導入効果の KPI・ROI 設計 が参考になります。

進め方 — 利用ルールから業務特化まで

公開事例を参考に、自社で進める手順に直すと次のようになります。

  1. 利用ルールを決めます。入力してよい情報と入力してはいけない情報の線引き、出力の確認、対外利用の扱いが要点で、東京都の 4 項目が雛形になります
  2. 法人向けのプランで、入力データが学習に使われない環境を用意します
  3. 選んだ一業務で、導入前の数字を測ってから試します。部門の担当者には、その業務での使い方の例を配ります
  4. 1〜2 ヶ月使ったら、処理時間と件数を導入前の数字と比べ、あわせて利用率を確かめます。使っていない人には理由を聞き、使い方の例を足します
  5. 汎用のチャットで「社内のあの資料」を聞かれる場面が多ければ、業務特化の AI (RAG) を検討します
  6. 効果が出た業務の型を、隣の部門へ広げます

利用ルールの作り方は 生成 AI の社内利用ガイドライン で詳しく解説しています。

情報漏えいや誤った出力はゼロにはできません。だからこそ、人が確認してから使う業務から始め、AI の回答の根拠を確かめられない場合に問い合わせを人へ回す線引きを先に決めておきます。中小企業で補助金も含めた 90 日の計画に落とし込むなら、中小企業の生成 AI 導入ロードマップ を参照してください。

FIXIT の支援 — 公開事例の期間と費用

FIXIT は、ここまでの手順のうち、利用ルールと定着の支援、業務特化の AI の開発のどちらも扱っています。自社の公開事例は、期間と費用だけを示します (いずれも税抜)。

公開事例内容期間費用 (本案件相当の目安)
工務店の連絡・情報の脱属人化Slack・Google Workspace への移行と生成 AI の活用、定着支援約 2〜3 ヶ月—
RAG による社内ナレッジ検索社内ドキュメントを横断検索して答える仕組み8 週間500 万〜800 万円
製造業の見積もり業務の自動化図面・仕様書から見積もりの根拠を作り、人が承認する仕組み8 週間600 万〜1,000 万円
問い合わせの一次対応の自動化問い合わせの一次対応を担う AI エージェント6 週間800 万〜1,200 万円

工務店の事例は費用を公開していません。社内の連絡と情報共有の基盤を整え、生成 AI を日常業務で使える状態にする段階は、業務 DX 伴走支援 で伴走します。現状のヒアリング、基盤の設計、データ移行、定着のサポートまでを一緒に進め、10 名規模で 150 万〜350 万円 (税抜) が目安です。部門の業務資料を教材にして使い方と利用ルールの叩き台を作るなら AI 活用研修 で、社内文書を読ませる仕組みや AI エージェントを業務に組み込む段階は AI エージェント開発 で対応します。

まとめ

公的な調査では、日本企業の AI の用途は文書の要約・作成と情報検索が中心で、効果も業務の効率化に集中していました。企業・官公庁・自治体の公式発表を並べると、汎用のチャットを広く配るだけでなく、社内文書を読ませる業務特化の AI を用意している組織があります。配るだけでは使う人と使わない人に分かれることも、デジタル庁と横須賀市の数字が示しています。

次の一歩は、頻度が高く、判断の基準を言葉にでき、誤りを人が拾える業務を 1 つ選び、今の処理時間と件数を測ることです。測った数字があれば、試した後の効果を社内で説明できます。

どの業務から始めるか、利用ルールと定着をどう進めるかを相談したい場合は、お問い合わせ からご連絡ください。AI 駆動開発のクリエイティブスタジオとして、一業務の選定から定着、業務特化の AI の開発まで伴走します。